#dynamic_Nagasaki

Dynamic Nagasakiを見つめ直します。現在おっさんが意味なくちゃんぽん食べ歩いています。

「ちゃんぽん」とは その8 上等なちゃんぽんとはちゃんぽんなのか? そぼろちゃんぽん 五目ちゃんぽん

長崎における上級ちゃんぽんの位置付け

そぼろちゃんぽんをはじめとする一つ値段の高いちゃんぽんは、そぼろちゃんぽんとか五目ちゃんぽんとか、上ちゃんぽんなどと称され、通常のちゃんぽんとは別の括りにおいて、メニューとして定義されてきたのが、本来の流れである。観光客に向けてのアミューズメント施設(東京駅の駅地下に見られるラーメンストリート福岡空港ラーメン滑走路に類似した業態)に近くなってしまった、長崎新地中華街(当ブログでは長崎「ちゃんぽんストリート」と呼んでいる)においては、この概念の変質が繰り返されており、具材のグレードをあげたものを追加した値段が高いだけのちゃんぽんと概念の成立した頃のそぼろちゃんぽんとの混在が見られている。長崎市民でも値段が高いちゃんぽんなんだから美味しいはず、と怪しい期待を胸に向き合って、通常のちゃんぽんとの違いから驚き、嘆き、悲しみ、退店するものもいるという。

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長崎ちゃんぽんストリート(長崎新地中華街)の中央に位置する華僑会館

正確な上級ちゃんぽん、グレードが別れている場合には特級、上、五目、そぼろの言葉が見られ、ただ生卵が乗っているだけのものを上級ちゃんぽんとするものから、並のちゃんぽんからすると別の料理へと変質させたものまでが見られており、長崎市民ですら、この概念について理解しているものはおらず、一度整理が必要になっている。

「そぼろ」とは何か?

本来のそぼろちゃんぽんについての定義を再度見直し、各店舗における上級クラスのちゃんぽんの具材等に関する比較をおこなっていくことを目的とする。

長崎市独特の「そぼろ」の文化

「そぼろ」というのは長崎の言葉で、色々なものが入っている炒め物をさす。「駅向こう」と言われる浦上地区の郷土料理である浦上そぼろは豚肉を入れたゴボウやモヤシの炒め物であり、これにニンジンなどを入れることがある。浜屋の地下食料品売り場でも、見られるこの料理は、特に美味な訳でもないが、豚肉が入った一種のおごちそうであった料理である。浦上そぼろに関しては、ポルトガル人の宣教師が、栄養価の高いものとして調理を奨めた調理法で、ポルトガル語で残り物をさす「ソブラード」(sobrando)や粗く材料を切っていれる「粗ぼろ」を語源としたと言い伝えられているが、この辺りがまた定かではないのが西の果ての伝統である。遠く千葉県の我孫子市の小学校でまで供されるというから、学校給食というものには適合するのだろう。

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長崎に残る最後の百貨店 浜屋での浦上そぼろ 吉宗(よっそう)からの

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吉宗の浦上そぼろ

後者の語源への連想が、ちゃんぽんにおけるそぼろに近いものであり、これに類似したものとして八宝菜を連想したのだろう。五目ちゃんぽんやそぼろちゃんぽんに関する知見を集めて回ってみると、このそぼろちゃんぽんに端を発した概念と捉えるのが良さそうである。

上級ちゃんぽんの定義の再考

当ブログにおける上級ちゃんぽん

並のちゃんぽんは大まかに見て、キャベツ、モヤシ、肉類(豚か鶏)、海産物、練り物(長崎のカンボコ一群)が入っているものであり、スープは鶏ガラが多く、唐灰汁のちゃんぽん麺を使った煮込み料理である。大抵の家庭でも作られるような残り物(ソブラードそのものではないか!)からのちゃんぽんの延長線にあるものである。

上級ちゃんぽんとなると、これらに加えて、具材が、開発当初の江戸末期から明治期にかけての支那料理というものの概念が加わってくる。大抵は八宝菜風の具材の取り合わせである。具材は白菜、椎茸、タケノコ、豚肉、海老、肉団子、イカうずらの玉子などであり、その辺りをベースにしたものが多い。

上級ちゃんぽんの消えゆくちゃんぽんストリート

今回はその上級ちゃんぽんで、古式ゆかしいものを紹介することとする。大変残念なのは、「ちゃんぽんストリート」に点在するちゃんぽんの老舗には伝統ある上級ちゃんぽんに該当するものはなく、文化として廃れつつあるところも「ちゃんぽんストリート」の現状なのである。ただ、王鶴のように安易にフカヒレ、伊勢海老、アワビあたりを載せておけばという店舗が増えていることは大変残念であるし、ただ肉団子が入っていれば上ちゃんぽんだと言い張る江山楼のような店舗もあるほどである。

長崎県下での上級ちゃんぽん提供店3選

あまり多くの店で頼む気がしない上級ちゃんぽんである。ほとんどの店は具材のアップグレード(航空機における課金によるアップグレードに類似しており、日本航空全日本空輸などでは、座席の広さ以外の特段の上級感に乏しい)に終始しており、本来の上級ちゃんぽんとしてのあり方には存在意義に乏しいのが実情である。

佐世保四海楼のちゃんぽん

本家四海楼は、長崎におけるちゃんぽん食堂の最高点を極めているが、その本質からは変異して、名前だけの存在となっている。このドブ川の様になった本流の源からの直系の支流は、佐世保四海楼である。

一度おとずれた際に、後学のためにと伺ってみると、「八宝菜のような」とも形容されるものが五目ちゃんぽんであるという。これはなかなか興味深い例えであり、始祖に近いところにもこのような例があるものかと、再訪時には、五目ちゃんぽんとしたのだ。これは福壽におけるそぼろの定義と一致しており、当記事・考察をだすきっかけとなった出来事だ。佐世保 四海楼での上級ちゃんぽんは「五目ちゃんぽん」である。

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稲佐地区の共楽園の上ちゃんぽん

共楽園のちゃんぽんには、上等なちゃんぽんと並のちゃんぽんとが用意されており、この差異はかなり大きい。具材の取り合わせは、八宝菜様であり、調理は同様でも、具材からの出汁の出方や食感の違いを楽しんでほしい。揚げカンボコが上等なのかはおいておくとし、彩りは落ち着いたものとしている。表記は上ちゃんぽんである。

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古川町 共楽園 (記載のみ)

また、そぼろという概念は消えつつあるものの、そぼろの記載のあるものは古川町の共楽園であろう。ここでは太麺皿うどんをそぼろ皿うどんと記載している。どのあたりがそぼろなのか、というのはわからない。

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これらは姉妹店であるというが、この差異が生まれることは長崎市内では珍しい。

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福壽のそぼろちゃんぽん

「長崎の中華料理を知るなら福壽から」というのはこのブログをお読みの読者からすると何となく感じられていることかと思う。福壽においては、古くからの長崎の伝統的な福建料理の流れが残っており、味付け、彩り、歯触り、温かさは正確にその伝統が見られる点が評価されるべきことだろう。ここの上級ちゃんぽんは「そぼろちゃんぽん」と記載されている。

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長崎県下での上級ちゃんぽんの概念の破壊されゆく例

昔はよかった江山楼

通常のちゃんぽんを廃止して、上ちゃんぽんを通常のちゃんぽん扱いしているのが江山楼である。「肉団子を入れておけば、上ちゃんぽん」とでも思っていそうな仕上がりであり、何とも腹立たしいのが古い華僑の人々の飲食ビジネスへの情熱のなさでもある。

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まとめ 「せっかくだから」につけ込まれてはいけない

「せっかく(長崎にきたの)だから」「せっかく(普段こない長崎中華街にきたの)だから」につけ込まれるものが多いことは大変嘆かわしい。上級ちゃんぽんの実情を知らない者は多く、本来の上級ちゃんぽんの様相を理解した上で、リピーターとして、上級ちゃんぽんの風味を楽しんでほしい。オプション料を払って大してちゃんぽんの風味に影響を及ぼさない具材のアップグレードをするのは、ちゃんぽんストリートにおける商売に呑み込まれており、本来のちゃんぽんの味や食感を楽しむことができない。

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