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Dynamic Nagasakiを見つめ直します。現在おっさんが意味なくちゃんぽん食べ歩いています。

ちゃんぽんとは その9 調理法への誤解と煮か焼きかの好み

100店舗達成の暁

ブログを始めて、はや2年ほどとなり、週に一回程度、ポチポチとちゃんぽんのリポートをし続けてきた。たった2年であるが、閉店した店、休業した店もちらほらと見られ、それぞれのちゃんぽん食堂や中華料理店でも小さなドラマが繰り広げられているらしい様をまた書きつけている事になる。天石上海楼も一時は休業していたというし、料理人の高齢化が進む西九州のエリアにおいて、名店・老舗の類でも次世代への継承が難しかったり、Covid-19下での観光事業の減速や出張の減少などの激動もあって、記載してきた店も早晩消えてしまうものが多く見られることであろう。

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100店舗を掲載するに至り、また基本に立ち返り、皆さんが知ってそうで知らないちゃんぽんのキホンへ戻ろうと思う。ちゃんぽんの症例報告のようであった各記事でのなんとなくしか定義もなかった単語への理解を深めてほしい。また、長崎に観光に来てとんでもないことを宣い、注文する輩が散見されるため、そのものたちへの警告と必読記事になるだろう。表面だけをみて、「なんもわかっとらん」人はあまりに多く、筆者もまだ、100店舗なのであり、ともに発達してきた皿うどんへの理解も乏しいのであるから、奥深きちゃんぽんの世界にまだ一歩を踏み出したうちにも入らないのであるが。。

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福壽のちゃんぽん
オーソドックスな具材とこだわりのスープと麺の取り合わせも良い

どこかの中華料理店で他所から来た観光客が長崎でも珍しいことを注文しており、店員とともに苦笑したことがある。「ちゃんぽんの麺、カタで〜」とのこと。さて、この苦笑の意味は、最後まで読んでみればわかるのだが、最初に少しだけ。

ちゃんぽんは煮込み料理であるのが原則であり、調理人においても、その日のスープから具材から麺から様々な条件から習慣的にちゃんぽんを調理している。硬め、やわめは客が決めることではなく、調理人が決めることなのである。ラーメンの感覚で、ちゃんぽんが語られやすいのはその姿によるものだろう。この記事ではちゃんぽんの調理理論の原則、調理方法の原則(どこかの日本料理屋の大将のようになってきたが)、その具材について、再度確認をしていくことを目的としたい。また、長崎において、ちゃんぽんのおすすめ店舗を長崎の人々に聞くことの愚も合わせて、今回の記事で明らかにしておこう。

ちゃんぽんの5つの原則

基本的なことをおさらいしよう。100店舗記念ということで、5つの原則を提唱したい。

- ちゃんぽんは福建に由来する日本料理である

- ちゃんぽんは煮込み料理である

- ちゃんぽんの元祖も本家も不明である

- ちゃんぽん麺には唐灰汁がなくてはならぬ

- ちゃんぽんの具材は自由であり、質素をよしとする

これらが守られなければならず、これに該当するかどうかという視点で、これまでの記事も書かれている。福建に由来することは歴史的に見ても事実であるが、始祖四海楼が主張するような元祖や本家については明確な記録がなく、三角亭の記載が明治期の地図にある程度である。これら5つの原則の中で、調理法に関することは三つであり、こちらを重視していただきたい。

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康楽のそぼろちゃんぽん
彩りが豊かであるのも良いのだろうが、ドギツイ感じもする

ちゃんぽんの調理理論「ちゃんぽんは煮込み料理である」

Vlogやレシピの類で、麺を茹で出したら、長崎ちゃんぽんではない。そのようなブログはちゃんぽん警察(DJN市内のどこかに存在するらしい)に通報の上、視聴を止めた方が良い。唐灰汁の強弱は、購入する麺を選ぶべきであり、この麺から滲み出る唐灰汁が、またスープや具材との相互作用により、風味を変える(と信じられている)。

原理原則

ちゃんぽんの調理方法の原則をここに記す。

  1. 油・脂を鍋にしく あぶらの選択はあなたが好きにすればよい
  2. 具材を投下する 順番はあなたが好きにすればよい
  3. 炒める 火の通り・時間はあなたが好きにすればよい
  4. スープを投入する スープの種類・配合はあなたの好きにすればよい
  5. 麺を袋や固まりからそのままスープに入れる 唐灰汁の強さはあなたの好きにすればよい
  6. 煮る スープで煮込まなければならない

注意点としては、第2、第3の段階において、具材の順番やお好みにすれば良い。具材についても中華的な下拵えをする(湯通し、油通しなど)はお好みである。スープの量などというものはこれが良いというものはない。全ては好きにすれば良いのだが、このステップだけは厳守されて然るべきである。佐賀のあたりまで行くと、野菜炒めのせラーメンとしてのちゃんぽんが井出ちゃんぽんにより流布されており、これは厳密な長崎ルーツのちゃんぽんではない。

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神戸のちゃんぽん 食堂ちゃんぽんらしい佇まいである

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唐灰汁入りのちゃんぽん麺

第一回の「ちゃんぽんとは」で記載した通り、ちゃんぽん麺には唐灰汁が含まれている。ちゃんぽん麺では、唐灰汁が小麦粉と相まって、独特に香り、火を入れた時の食感や焦げ目や加熱による気泡の入りを生じ、微妙に食感や味が変化する。黄色い色は唐灰汁によると記述するものもいるが、あまり強い黄色になる場合には何か別のものが入っていると思った方が良い。煮込むことにより唐灰汁がスープに染み出し、スープにさらなるとろみを加えるようだ。火が通るとちゃんぽん麺はさらにその弾力を増し、唐灰汁や小麦の香りも強くなる。スープの色味もどこか灰色がかって見えてくるのだが、灰色のちゃんぽんが美味しいと筆者は思い込んでいる。

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福壽の皿うどん 噛むほどに出てくる小麦の香ばしさとそれを引き立てる唐灰汁の香り

唐灰汁入りの麺を揚げてその気泡やサクサクとした食感を楽しむのが細麺皿うどんで、丁寧に作られた麺を自家で揚げている中華料理店やちゃんぽん食堂はえも言われぬ、気泡が生じ、芳ばしい香りの後、口に運ぶとサクサクとした食感の後にくるもちもちとした食感があり、大変美味なのである。また皿うどんの特集でもする頃にはまたその辺りを探究してみたいが、今時、自家で麺をあげるものは少なくなっており、カロリーリスクの大きさ故、踏みとどまっている。

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唐灰汁入りの麺の調理方法による変化は当ブログにおける福壽の記事を参照すると良い。

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福壽の五目焼きそばの麺
かた焼きにしてある部分はサクサクとした食感を得、餡とよく絡むようになっている また、上質な麺は火を通すとやや透明感を増す

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唐灰汁を使用している製麺所は以下の通りである。長崎市内で思いつく限りをあげてみる。

唐灰汁の強さもそれぞれの製麺所で異なり、あまり多くは聞かないのであるが、なんとなくどこの製麺所の麺かがわかるようになってくるものである。通信販売などで手に入れることも可能であるから、興味がある場合には取り寄せてみるのも良いだろう。

具材のバラエティ 自由になりたくとも自由でなくても良い

具材のバラエティには多くがあったのを覚えているだろうか、このくらいのバリエーションがあるのが面白い。印象であるが、多い順に並べておく。キャベツからハンペンあたりまでが必須になっている材料である。ベースとして皆が慣れ親しんでいる具材であるだけであり、皆が好きなものを入れればよいと筆者は思っている。

  • キャベツ
  • モヤシ
  • タマネギ
  • 豚肉
  • ハンペン(色は問わないが緑は紅より少ない)
  • ゲソ
  • ニンジン
  • アサリ
  • 牡蠣
  • ネギ
  • キクラゲ
  • ニラ
  • 黄ニラ

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ちゃんぽんの具材は家庭向けにはすでにまとまっているものがある

上級ちゃんぽんになると、これはガラリと変わるのである。自宅でのちゃんぽんとなると、大抵は冷蔵庫の残り物で作るのであるから、それが母の味である。

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具材の処理

具材の処理も店によって異なる。細切りにして、麺のサイズに近しいものにするか、角切りにして、具材だけの風味も生かすものにするのか、これも好みである。細切りは手間がかかるため、角切りの方が多い。細切りにすると火の通りは早くなるし、角切りにすると歯触りが残る。これが次項「煮なのか焼きなのか」にも関係してくる。

ちゃんぽんの調理理論

当ブログでは、ちゃんぽんの位置付けを福建風の日本料理と定義した。これは、麺の由来は福建にあり、現在でも唐灰汁は大陸から輸入され、福建にも同様の麺があるためである。大陸でも同じような料理はあり、これを原点とし、日本での一つの昇華系としてのちゃんぽんがある。長崎のちゃんぽんストリートの人々はあまり口にしないのだが、「湯麺は煮ます」がサラリと出てくるbekkiさんのおっしゃるように、やはり大陸では煮込むのである。肉絲湯麺をちゃんぽんの源流とするのであれば、やはり煮込むという思考は大切にしたほうがいい。

 

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五島の平安食堂のちゃんぽん 離島に行ってもちゃんぽんの文化は根付いている

 

具材を炒め、そこにスープを投入し、具材からの旨味や味を引き出し、麺を投入し煮込むのがちゃんぽんである。スープに具材やちゃんぽん麺から出てきたものを集積する作業である。このためスープは必ず味わってみてほしい。簡便な料理に見えるが、春のキャベツやアサリ、冬の牡蠣など、季節の移ろいを感じさせる味がそこにはあるが、これを上手に引き出しているかどうかは、その店の腕次第である。

煮なのか焼きなのか 好みのバランスを知る

さて、全てのステップにおいて、原理原則だけ守れば、あとは好きにすればよいというのがちゃんぽんである。大抵は料理屋などは客単価があり、原価があり、人件費があり、テーブルの回転があり、家賃があるため、その店ごとの制限幅の中でのプロダクトがあなたの前に出てくるちゃんぽんである(大抵どこの料理屋でもそうであるが)。値段などというのはそう変わらず、具材の多様性がそうないのはこれによるだろうが、調理の段階となると、店によって異なる。

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一種ブランド化されている店内のカウンターでは鍋を振るのを観察できる(三八ラーメン浜町店)

そもそもの煮と焼きであるが、これはあるバーのマスターが提起しており、これを言語化した人は他に聞いたことがない。長崎市の人々には、どこの辺縁の地方においてもみられるのかもしれないが、言語化したり、物事を詳細に分析したり、客観視したりという能力は他所よりも劣っている。自分たちの好みの傾向を解析したりという話はあまり多くを聞かない。これらができる人々は大抵、膨大な仕事量から技能や知識を獲得するような職人であったり、頭脳を使う職業についている。

さて話を戻すと、ちゃんぽんにおいて、煮と焼きがどちらもないといけないのだが、どちらが強いかだけによって好みが分かれ、大陸における陰陽理論の関係性のようなものである。極まるがどちらも存在するのである。どちらも少ないとそのパワー、かけられた熱量が小さくなるのであり、かけ続けた最後、弾けるとただの消し炭となる。

ちゃんぽんにおける「」は火を通して、キャベツやらモヤシやらが半分以上透き通るように火が入れられて、豚肉などはふっくらとする程度になるのをいう。野菜の歯応えは少々失われるが、スープにおいても、その滋味豊かな甘味などが際立つようになる。この「煮」をメインにする店ではちゃんぽん麺もやや柔らかくなるように煮込まれていて、具材の処理も細切りにしてあり、上品なちゃんぽんとなる。ちゃんぽん麺から唐灰汁が出てくるのもこの過程によるのである。火力が出にくい家庭でのちゃんぽんはこちらの方が調理がしやすいだろう。

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福壽のちゃんぽん
しんなりとするほどの火の通りで麺と絡めて食べるのに向いている

ちゃんぽんにおける「焼き」は焼き目がつくほどに強く火を当てて、ハンペンからキャベツから豚肉から何から何まで、香ばしい焼き目をつけるのをいう。野菜の歯応えは残り、香ばしい焼き目から具材の風味を感じるが、麺とスープとの渾然一体化は弱くなる。この「焼き」をメインにする店では、ちゃんぽん麺はやや固めになる傾向にあり、具材の処理は角切りであったりするため、割と三八ラーメンのような、ちゃんぽん食堂に多いスタイルで、どこか力強さを感じさせるのである。

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三八ラーメンのちゃんぽん
よく見るとハンペンに焦げ目がついていたりするのだが、これがまた香ばしくて嬉しくなる

陰陽理論でいけば、ちゃんぽん世界においては煮が陰、焼きが陽なのかもしれない。これらの度合いも個人によって、各々好みが異なるため、同じ系統の店であっても、どの店が好きかどうかは大きく異なる。そもそも焼きが好きか煮が好きかによって、具材はほとんどが同じであるのだから、大きく仕上がりが異なるため、好みとする店舗の方向性からして異なる。また、ちゃんぽんの食べ方とも関わるのであろうが、麺に具材を絡めて食べる習性のあるものは細切りの具材と煮の強いちゃんぽんを好む傾向にあるように思う。

ちゃんぽんはどこの店がお好きですか?

たかだか、数時間も空間をともにしていない人に、ちゃんぽんのおすすめを聞くのは、長崎における愚の骨頂であろう。店の綺麗か汚いか、おかみさんのキャラクターの濃さ薄さも含めて、おすすめはあるだろう。今までにそのような質問をした者に対しては、当たり障りのないラインで適当にいなされている。

具材の処理、煮か焼きかの好みの強さによって、正反対のちゃんぽんが供されることになるのだから、どんなちゃんぽんがその人の好みなのかも併せて、聞いてみるとよいだろうが、かなり細かいイヤな人にも見えてくる。

ちなみに最初の硬めのちゃんぽんを所望した者には普通のちゃんぽんが供されたようであった。硬めのちゃんぽん、つまりあまり煮込まれていないちゃんぽんを試したいのであれば、出前をやっている店に行くとよいのだ。出前は長崎の各所でも健在であり、出前の原動機付き自転車に揺られていく間に緩やかに煮込みが進んでいくのであるから、出前で持っていく硬めに仕上げられたちゃんぽんを店で食べてしまえば、硬めのちゃんぽん麺で食べることができるのだ。それをやっていない店で頼むのはまた、ちゃんぽんのことを「なんもわかっとらん」人である。まあ、火の通っていないガリガリと歯触りのする感じのするちゃんぽん麺が美味しいかといえば美味しくないのであるが。。。

あとがき 100店舗において、最悪のちゃんぽん

最後にこれらの原理原則も全く踏まえていないちゃんぽんが発掘されたため、これを最後に紹介しておきたい。ここを勧めたものは、「なにもわかっとらん」ということになる。冷ややかな眼差しを送ってあげてほしい。

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